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「中止後」の治療という問いに、日本の実臨床が示した手がかり(The Breast掲載事例)

2026/07/08

 HER2陽性の転移乳がんで使われるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、肺の副作用である間質性肺疾患(ILD)のために治療を中止することがあります。では、中止した後に別の抗HER2治療を続けられるのか。全国222施設が参加した日本のリアルワールド研究「EN-SEMBLE試験」が、その実態を明らかにしました。研究はThe Breastに掲載され、ESMO 2025でも発表されています。

📄 掲載論文の謝辞欄に、エダンズのメディカルライティング支援が明記されています。

The Breast 202607

ILD のために T-DXd を中止したら、その後の治療はどうなる?

多くの患者は、T-DXd を中止した後も別の抗 HER2 療法を続けられ、ILD の副作用が再発することはまれでした。

  • ILDでT-DXdを中止した患者のうち、約8割(81.5%)が、次の治療として抗HER2治療を受けていました。
  • 後続治療の期間中に肺の副作用(ILD)が再発した人は、ごく少数(3.4%)にとどまりました。
  • ILDが軽い段階(グレード1)で中止できた患者ほど、その後の治療成績が良い傾向でした。

この研究は何を確かめたのか?

「ILD で T-DXd をやめた後、どの治療を続ければ安全で効果があるか」という、これまで答えの少なかった問いを、実際の診療データから検証しました。

  • T-DXd は、HER2 陽性の転移乳がんで広く使われる標準的な治療です。
  • 一方で、肺の副作用(ILD)が出た場合は治療の中止が必要になります。日本人ではこの副作用が比較的起きやすいことも知られています。
  • これまで、中止した後の治療をどう選べばよいかを示すデータは限られていました。
  • そこで本研究は、全国 222 施設の実際の診療から、ILD で中止した 146 例の「その後」を追いました。

研究のハイライト

研究課題

 HER2 陽性の転移乳がんで、ILD のために T-DXd を中止した患者は、その後どのような治療を受け、どのくらいの効果と安全性が得られるのか。 

結果

  • 対象は、EN-SEMBLE 試験の全 664 例のうち、ILD で T-DXd を中止した 146 例(22.0%)。
  • 約 8 割(81.5%)が後続治療として抗 HER2 治療を受けていた。
  • 治療効果の目安となる全生存期間の中央値は 32.4 ヶ月だった。
  • 後続治療中の ILD 再発はまれ(3.4%)だった。

結論

  • ILD を早く見つけて適切に対応することが、その後の抗 HER2 治療につなげる鍵になる。
  • 一度 ILD を経験しても、その後の治療で ILD が再発することは少なかった。

プロジェクトマネージャーの視点

James smiling 1

James Graham, PhD

エダンズ プロジェクトマネージャー

 ウォーリック大学で生物科学の博士号を取得し、分子生物学や細胞培養、タンパク質精製を専門とする、CMPP認定のメディカルパブリケーションエキスパートで、システマティックレビューやメタアナリシス、非臨床研究の設計・実施など製薬業界向けの支援に23年以上携わっています。  

「実臨床から得られる大規模なデータは、臨床試験だけでは見えにくい現場の問いに答える手がかりになります。膨大な情報を、読み手の判断に役立つ形へ整理していくことが重要です。」

専門家の視点

Sarah-Bubeck

Sarah Bubeck, PhD

エダンズ メディカルライター

感染症、腫瘍学、自己免疫疾患の分野で広範な研究背景を持ち、抗体医薬品開発にも精通した、数多くの臨床論文の執筆・投稿を支援してきたメディカルライティングのエキスパート。

「複雑な臨床データを国際誌に届けるには、正確なデータ提示と、その結果が臨床で何を意味するかを明快に伝える構成が欠かせません。」

まとめ:実臨床の問いに、データで答える

 トップレベルのジャーナルに研究を届けるには、確かなデータと、それを読み手の判断に役立つ形で伝える組み立ての両方が必要です。この研究は、これまで答えの少なかった「ILD で T-DXd を中止した後」という現場の問いに、全国規模の実診療データで答えました。エダンズは、研究者の知見が明快さを持って世界に届くよう、パートナーとして支援しています。 

ご研究の位置づけを、原稿の段階で一度整理してみませんか

Takizawa

担当窓口

滝沢

パブリケーションサポートチーム

 「この結果を、どの読み手に、どんな問いへの答えとして届けるか」
ご研究のテーマや投稿先の設計について、原稿を見ながら一緒に考えます。
ぜひお気軽にお問合せください。